今年に入ってから特に、うつくしい日本語というものに興味を惹かれる。

 

例えば春の始まりに一人でお皿を拭いている時なんかに、脳内で自動再生される文章がある。

 

まぢかに春

雪は水音をたててくつの下でとけた

 

トーマの心臓(萩尾望都)より

 

ぼーっとした状態でふいにその文章が音になって流れて、

「ああ、春が近いのか」と思う。

 

これは愛する『トーマの心臓 』の始まり、トーマの独白である。

 

何度も何度も擦切れるくらい読んだ文章は、

音になって体の中に染み込むのだと気付いた。

 

そういう体に染み込ませるみたいに、うつくしい文章を飲みたいなと思ったので、

図書館で川端康成の『雪国 』を借りてみた。

 

雪国 (角川文庫)

雪国 (角川文庫)

 

 

あまりにも有名な始まりの一節。

 

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。

夜の底が白くなった。

 

雪国(川端康成)より

 

わたしは雪が降ると憂鬱な気持ちにしかならないけれど、

誰かの目線で味わい直してみると、ああこれも悪くないな、って思う。

そしてうつくしい文章はふとした瞬間に再生される。

 

かつて、文筆家は尊敬する作家の文章を原稿用紙に写して、その文体を学んだという。

そんな風に、うつくしい文章を音のリズムまるごと体に取り込みたいなと思った。

そうすれば季節の変わり目の度に脳内再生が始まってくれて、それってなんて幸せなの、と。

 

なんとなく、

今の人生を味わい尽くすということを楽しみたい気持ちが高まっているので、その一環です。

おわり。

 

文学

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