先日、ずっと行きたいと思っていたミナペルホネンの展覧会「つづく」に行ってきました。
思わぬ方向から心に刺さり、いくつもの短編小説を読み終えたような気持ちになる展示でした。
会期中になんとか、と思っていたのですが無事に滑り込めました。(2/16までです)
ブランドがスタートして2020年で25周年を迎えます。
この展示は「種」「森」「芽」「風」などのテーマによって展示されています。
展示が圧巻で、過去25年分の服400着以上が展示されている洋服の「森」や、テキスタイルの図案「芽」、構想中の宿のプロトタイプの中に入れたりするアイデアと試みの「種」など、大ボリュームでした。
こういう、目で見てなるほどなぁと圧巻されるタイプの展覧会だと思って訪れたのですが、
最後から2つめの部屋の「土」という展示が心に突き刺さって、思わぬ方向から殴られたような気持ちになりました。
「土」は洋服と記憶というテーマで展示されていました。
等身大のアクリルパネルに洋服が挟まれたものが、すっくと立ち上がっています。
これらは、ミナペルホネンの服の持ち主から借りてきたもの。
買ってからの年数と、この服を着ていた時の思い出が書かれていました。
全部でどれくらいあったかな。15着分くらい展示されていたかな?
それぞれに思い出が染み付いていました。
そして最後の展示に打ちのめされました。
タンバリンの布を使ったワンピースだったと思います。
7年と書いてあったと記憶しています。
アクリルにはその服を着ていた女性の、旦那さんによる言葉がプリントされていました。
「この服は昨年亡くなった妻がよく着ていました。
袖を通すと生き生きしていました。ありがとうございました。」
というような内容のことが書かれていました。
この展示を見る直前に、トイレに行ったのですが、その途中で携帯を確認した時に、友人の旦那さんが急逝されたという連絡が入っていました。
お会いしたことはなかったのですが、まだお若く、話に聞く限りお元気そうだったので、そんなことってあるのかと言葉が出ませんでした。
戻って来てこの「土」のワンピースの展示を見て、友人の旦那さんの急逝と重なり、薄暗い展示会場で立ち尽くしてしまった。
いろんなことが頭の中に浮かんでは渦巻いていった。
特に服は着ていた人の匂いや記憶が残っていて、捨てられるものではないなと思った。
けれど、持ち物を何もかも残すことはできないだろう。形見になるものを残して、それ以外は手放すしかないのだろう。何もかも残すには、日本の家の多くは小さすぎると思うので。
誰も死ななければいいのに。でも地球がそういうシステムだと自分も生まれてきてないなとか。
そして『100日後に死ぬワニ』のことを思い出した。読者は、主人公のワニが100日後に死ぬことを知っているが、本人は知らない。映画を見て続編を楽しみにしたり、一年後に届くという商品を注文する姿を見て、どうしようもない気持ちになる。読者は100日後に死なずにワニの死を見届けられると思っているかもしれないけれど、読者全員に言えることであるが、生きているかもしれないし死んでいるかもしれない。
それから、何年も着る服というのは家具に似てるけど、家具は常に暮らしの中にあるから、その家具を使ったという特別な思い出が思い起こされにくいのかもしれない、と思った。
服は「これを着た日」という思い出が残りやすい。
日常の中の祝祭性と結びつきやすいというか。この服を着てあの街を旅したなぁとか、あの子と会って喫茶店行ったなとか、公園でピクニックしたなぁとか。
自分が当たり前に着ていたお気に入りの服が、ある日突然形見になる可能性があるのだな、ということとか。
などということを次々と考えていた。
そこに展示してある全ての服に物語があって、いろんな人の人生を感じて、いくつもの短編小説を読んだような心地になった。
アパレルブランドの展示を見終えて、こんな気持ちで美術館をあとにすることになるとは思わなかった。
ミナペルホネンの展覧感「つづく」は今週2/16までなので、行ける人にはぜひ行ってほしい。
想像とは違う方向で、とても心揺さぶられる展示でした。
おわり。
この巾着、ミナのです。
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