今年は夏フェスもことごとく中止ですね。
実家にも帰れず、夏祭りもなく、花火もなく。こんな夏は初めてです。
昨年、2019年に大阪であった野外フェス『音泉魂』の思い出について書きます。

会場からのシャトルバスの中でスマホにぽちぽち書き綴ったものなのですが、
私はあの日あそこにいたから、読むとその場所にぱっと帰ったみたいな気持ちになりました。
それぞれ、これまでに行った夏フェスやライブの光景を思い出して、その場所に帰って、一時でも夏フェスのあの幸福な感じを味わってもらえたらいいなと思って、ほとんど個人的日記に近いものですけど、公開します。

風が強くてシャトルバスが到着すると果てしなく並ぶカラーコーンが1つ残らず風で倒れていった。
どんだけ風が強いんや?と怯える。
昨年(2018年)は台風で中止になってしまったのだ。こんなに風は強いけど、二の舞にならなくてよかった。

ゲートをくぐると、右手にグッズ列が。
ひとつだけやたら長いアーティストがあり、なんだ……誰だ……?と思って見に行ったら、フィッシュマンズ!ってなりました。
そうだよね。他の比べて圧倒的にグッズを販売する機会少ないし、全国どこで上演しようと駆けつける系の人たちが多いだろうし。
わたしは2016年初夏にあったフィッシュマンズのツアーの名古屋公演に行ったあの日から、
これから行ける限り全てのフィッシュマンズの公演に行こうと決めたので、今日ここに来ている。
今日はそのほかに、bonobosも見たいと思っている。


東京都23区の夏の宵を歌った曲。
会場は37℃を超える強烈に暑い。
風は吹くものの日陰などなく、直射日光を浴びた首は光の尖った部分で直接肌を突き刺されているかのように痛い。
そんな中でも、この曲の歌詞がやけにリアルに耳に飛び込んできて、目を瞑れば東京都近郊の夜の風景が目に浮かぶ。
こんなに目の前に映像が見える曲というものは珍しい。
私は何かを想像するとき文字でしか浮かばない。と言うか独り言みたいな音で聞こえる。そういうわけで、あまり映像というものが浮かばないのだ。
それなのに、この曲を聞いた途端に目の前にすーっと映像が見えた。
例えば終電が終わった後に羽田空港からバスタ新宿に向かって走る深夜バスから見える川に反射した夜の街灯の明かりだとか、
夏の夜に新宿駅に立っていたら甲州街道を吹き抜ける少しだけぬるい風だとか、そういうものがありありと見えた。
はっきり言って現地は灼熱地獄だった。これ以上陽の下に立っていたらちょっとまずいのではないかと思うような暑さ。
それでいて、いつまでもこの音楽が終わらなければいいと思った。
これほど暑いと相当好きなアーティストでないと立っていられない。影の下にいないと命が危ういのではないかと思うほど暑い。
この気が狂いそうな暑さの中でも、そう思わせるほど良かった。
帰り際に近くにいた男女が、「やさしい!なんてやさしい音楽!」って言ってて、わかる……となった。


この日はフェスに登場している様々な人がボーカルを務める。
SLOW DAYS
vo.欣ちゃん(フィッシュマンズのドラムス)
欣ちゃんが欣ちゃんの歌い方で欣ちゃんとして歌っているのがいいな、などと思っていたのに、
「勇気のかけらも見せずに死ぬのは誰ですか」あたりで、欣ちゃんとサトちゃんが重なり合うように声が似通っていって、というか本当に重なり合うという感覚で。
それまで汗がダラダラ流れていたのだけれど、ぶわっと涙腺が刺激されて涙が出てきた。
気分
vo.蔡忠浩(サイチュンホ)(bonobosのボーカル)
始まった瞬間にぞわっとするほど、彼は彼のボーカリストとしての美しさをもったまま気分にぴったりと寄り添う声色で驚いた。
MAGIC LOVE
vo.ハナレグミ永積タカシ
マジックラブにこんなにレゲエを感じたの初めてだった。というかライブで聴くの初めて。やっぱりフェス仕様なのだな。
頼りない天使
vo.原田郁子
「遠い夜空の向こうまで連れてってよ」って言った瞬間に、本当に天使が降りてきたみたいに綺麗で、純真さだけがあった。
「こんな素敵なことが今もそばにあるなんて」、それこそが今のこの状態だなと思った。
人が密集して、後頭部には午後15:30のジリジリとした太陽光が差し、どう考えても灼熱なのに、足元から海風が吹いてスカートがしゃらしゃら揺れて涼しかった。
この曲を聴きながら何度も泣いてしまった。嗚咽はうるさいので唇を噛んで耐えた。
いかれたbaby
vo.角舘 健悟(Yogee New Wavesのボーカル)
誰がどの曲を演るのか知らなかったので、最初誰だか分からなかったが、歌い始めてすぐに高いところを歌う時の「ヒッヒッ」というような短く途切れて跳ねるような歌い方でヨギーの方だとわかった。
歌い方はきっと指紋みたいなものなのだろう。その人だとはっきりわかる。
感謝(驚)
vo.みんな
ところで私は、この音泉魂に参加する一年前に会社を辞めた。
そしてひとつ決めていたことがあって、「会社を辞めてから一年間を人生の夏休みとしよう」と設定していたのだった。
就職先がものすごく山奥だったため、他の友人が友人と遊んだりして過ごしている中、ほとんどの休みを一人で過ごした。自分の、それなりに若くて元気で学生時代と違って自由になるお金もできて…という、人がみんな遊んでいた時代を、ほとんどコメダかスタバか家の和室で横になって過ごした。
シフト制だったのでいつでも誰とも休みが合わず、自分で選んだことだったけれども、人と遊べないことはこんなにもきついのかと思った。
途中からは、会社が休みの日は淡々と本の原稿を書いた。忙しくて、何も考えずに取り組んでいたら日が暮れていて、心を鎮めてくれた。ありがたかった。あの本たちを手にとってくださった方に、本当に感謝します。
そんな風に過ごし、人と遊びたいという思いは7年かけてどんどん膨らんでいた。
なので、会社を辞めたら1年は、これまで7年間人に会えなかった分、友人に会うことを一番優先して過ごそう、遊ぶことを優先しようと決めた。もちろん仕事はしていたし執筆も連載もしてた。その上で、友人の誘いという誘いを断らずに会いたい人とどこへでもいこうと。
この音泉魂が夏休みの終わりだと漠然と決めていた。
友人にはこれからも会うけれど、何より一番優先する期間は終えるのだと。
舞台上から、「夏休みが終わったみたいな顔した僕を ただただ君は見てた」という声が聞こえた途端に、ああ本当に私の夏休みは終わるのだと思った。
(一年経ってみたら、いまも夏休みの延長のような感じだったけど。)

ところで、幽霊には匂いがあるという話を聞いたことがある。
思えば、神社にいるときってスキっとした独特の凛とした空気がある。
たとえば、森の中にいるみたいに心地よい香りがしないものかと思い、激しく砂埃が舞う会場だったにも関わらず深呼吸していた。
どんなに息を吸っても幽霊の匂いはわからなかったけど、サトちゃんがいて楽しくしていたらいいなと思った。
おわり。
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実家にも帰れず、夏祭りもなく、花火もなく。こんな夏は初めてです。
昨年、2019年に大阪であった野外フェス『音泉魂』の思い出について書きます。

会場からのシャトルバスの中でスマホにぽちぽち書き綴ったものなのですが、
私はあの日あそこにいたから、読むとその場所にぱっと帰ったみたいな気持ちになりました。
それぞれ、これまでに行った夏フェスやライブの光景を思い出して、その場所に帰って、一時でも夏フェスのあの幸福な感じを味わってもらえたらいいなと思って、ほとんど個人的日記に近いものですけど、公開します。

風が強くてシャトルバスが到着すると果てしなく並ぶカラーコーンが1つ残らず風で倒れていった。
どんだけ風が強いんや?と怯える。
昨年(2018年)は台風で中止になってしまったのだ。こんなに風は強いけど、二の舞にならなくてよかった。

ゲートをくぐると、右手にグッズ列が。
ひとつだけやたら長いアーティストがあり、なんだ……誰だ……?と思って見に行ったら、フィッシュマンズ!ってなりました。
そうだよね。他の比べて圧倒的にグッズを販売する機会少ないし、全国どこで上演しようと駆けつける系の人たちが多いだろうし。
わたしは2016年初夏にあったフィッシュマンズのツアーの名古屋公演に行ったあの日から、
これから行ける限り全てのフィッシュマンズの公演に行こうと決めたので、今日ここに来ている。
今日はそのほかに、bonobosも見たいと思っている。


bonobosの23区で夏の夜の甲州街道が見える
ステージにはbonobos とりわけ刺さったのが、『23区』という曲。23区 bonobos
東京都23区の夏の宵を歌った曲。
会場は37℃を超える強烈に暑い。
風は吹くものの日陰などなく、直射日光を浴びた首は光の尖った部分で直接肌を突き刺されているかのように痛い。
そんな中でも、この曲の歌詞がやけにリアルに耳に飛び込んできて、目を瞑れば東京都近郊の夜の風景が目に浮かぶ。
こんなに目の前に映像が見える曲というものは珍しい。
私は何かを想像するとき文字でしか浮かばない。と言うか独り言みたいな音で聞こえる。そういうわけで、あまり映像というものが浮かばないのだ。
それなのに、この曲を聞いた途端に目の前にすーっと映像が見えた。
例えば終電が終わった後に羽田空港からバスタ新宿に向かって走る深夜バスから見える川に反射した夜の街灯の明かりだとか、
夏の夜に新宿駅に立っていたら甲州街道を吹き抜ける少しだけぬるい風だとか、そういうものがありありと見えた。
はっきり言って現地は灼熱地獄だった。これ以上陽の下に立っていたらちょっとまずいのではないかと思うような暑さ。
それでいて、いつまでもこの音楽が終わらなければいいと思った。
これほど暑いと相当好きなアーティストでないと立っていられない。影の下にいないと命が危ういのではないかと思うほど暑い。
この気が狂いそうな暑さの中でも、そう思わせるほど良かった。
帰り際に近くにいた男女が、「やさしい!なんてやさしい音楽!」って言ってて、わかる……となった。


フィッシュマンズ
待ちに待ったフィッシュマンズ。この日はフェスに登場している様々な人がボーカルを務める。
SLOW DAYS
vo.欣ちゃん(フィッシュマンズのドラムス)
欣ちゃんが欣ちゃんの歌い方で欣ちゃんとして歌っているのがいいな、などと思っていたのに、
「勇気のかけらも見せずに死ぬのは誰ですか」あたりで、欣ちゃんとサトちゃんが重なり合うように声が似通っていって、というか本当に重なり合うという感覚で。
それまで汗がダラダラ流れていたのだけれど、ぶわっと涙腺が刺激されて涙が出てきた。
気分
vo.蔡忠浩(サイチュンホ)(bonobosのボーカル)
始まった瞬間にぞわっとするほど、彼は彼のボーカリストとしての美しさをもったまま気分にぴったりと寄り添う声色で驚いた。
MAGIC LOVE
vo.ハナレグミ永積タカシ
マジックラブにこんなにレゲエを感じたの初めてだった。というかライブで聴くの初めて。やっぱりフェス仕様なのだな。
頼りない天使
vo.原田郁子
「遠い夜空の向こうまで連れてってよ」って言った瞬間に、本当に天使が降りてきたみたいに綺麗で、純真さだけがあった。
「こんな素敵なことが今もそばにあるなんて」、それこそが今のこの状態だなと思った。
人が密集して、後頭部には午後15:30のジリジリとした太陽光が差し、どう考えても灼熱なのに、足元から海風が吹いてスカートがしゃらしゃら揺れて涼しかった。
この曲を聴きながら何度も泣いてしまった。嗚咽はうるさいので唇を噛んで耐えた。
いかれたbaby
vo.角舘 健悟(Yogee New Wavesのボーカル)
誰がどの曲を演るのか知らなかったので、最初誰だか分からなかったが、歌い始めてすぐに高いところを歌う時の「ヒッヒッ」というような短く途切れて跳ねるような歌い方でヨギーの方だとわかった。
歌い方はきっと指紋みたいなものなのだろう。その人だとはっきりわかる。
感謝(驚)
vo.みんな
ところで私は、この音泉魂に参加する一年前に会社を辞めた。
そしてひとつ決めていたことがあって、「会社を辞めてから一年間を人生の夏休みとしよう」と設定していたのだった。
就職先がものすごく山奥だったため、他の友人が友人と遊んだりして過ごしている中、ほとんどの休みを一人で過ごした。自分の、それなりに若くて元気で学生時代と違って自由になるお金もできて…という、人がみんな遊んでいた時代を、ほとんどコメダかスタバか家の和室で横になって過ごした。
シフト制だったのでいつでも誰とも休みが合わず、自分で選んだことだったけれども、人と遊べないことはこんなにもきついのかと思った。
途中からは、会社が休みの日は淡々と本の原稿を書いた。忙しくて、何も考えずに取り組んでいたら日が暮れていて、心を鎮めてくれた。ありがたかった。あの本たちを手にとってくださった方に、本当に感謝します。
そんな風に過ごし、人と遊びたいという思いは7年かけてどんどん膨らんでいた。
なので、会社を辞めたら1年は、これまで7年間人に会えなかった分、友人に会うことを一番優先して過ごそう、遊ぶことを優先しようと決めた。もちろん仕事はしていたし執筆も連載もしてた。その上で、友人の誘いという誘いを断らずに会いたい人とどこへでもいこうと。
この音泉魂が夏休みの終わりだと漠然と決めていた。
友人にはこれからも会うけれど、何より一番優先する期間は終えるのだと。
舞台上から、「夏休みが終わったみたいな顔した僕を ただただ君は見てた」という声が聞こえた途端に、ああ本当に私の夏休みは終わるのだと思った。
(一年経ってみたら、いまも夏休みの延長のような感じだったけど。)

ところで、幽霊には匂いがあるという話を聞いたことがある。
思えば、神社にいるときってスキっとした独特の凛とした空気がある。
たとえば、森の中にいるみたいに心地よい香りがしないものかと思い、激しく砂埃が舞う会場だったにも関わらず深呼吸していた。
どんなに息を吸っても幽霊の匂いはわからなかったけど、サトちゃんがいて楽しくしていたらいいなと思った。
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