2021年に味わえる一番幸福な時間は、映画館に足を運んでフィッシュマンズの映画を見ることだと思った。


(今日公開の映画フィッシュマンズのネタバレありです。)フィッシュマンズ関連書籍を読むたびに、
何度読んでも悲しい結末を迎える童話を、繰り返し読んでいるような気持ちになっていた。


どうして、何度読んでも佐藤伸治が居なくなる結末に辿り着くんだろう、と本気で思ってしまって。

読み終えると、知り合いが亡くなったような気持ちになっていた。


読み始めると必ず幸福な時代があって、

でもそこを通り越すと、何度読んでも絶対に悲しい結末に辿り着くことに毎度戸惑っていて、
今度こそそうではない結末にたどり着くルートがあるような気持ちになってしまうのだと思う。


何度読んでも何度も悲しい。

それって多分、どの本も佐藤伸治が亡くなったところで本が終わるから。
音楽葬の話が出て、終わる。


何年もそれを繰り返してきたけど、
今日突然続きがあったことを知らされた。というか気付かされた。



エンドロールが、闘魂2019の映像だった。

サトちゃん不在の中、サトちゃんのボーカルとHONZIのバイオリンが流れて、それ以外の音はライブ演奏で、

あれは紛れもなく、続きの世界で、

残された人が演奏することって、セラピーでもあるけど、きっといなくなった人の不在を強烈に感じることであるだろうと思っていて、

それでもずっと演奏し続けてきてくれたから、続いていて、後追いの私もフィッシュマンズの演奏を聞くことができ、

なんならあの映像の最前列で私も頭を揺らしており、


この物語には続きがあったんだ、と強烈に思った。

私たちの見てきたライブは、全部続きだったんだ、と思った。


気づいたらフィッシュマンズの映画の中に自分も居たということに驚いたし、

なんというか強烈に希望を感じた。

ずっと続いてるんだなということに。



それから、音楽葬の映像は初めて目にして、

あの瞬間、映像の中の全員に佐藤伸治の不在が突き刺さっていると同時に、

映画館の座席に座っている人全員にとってもそうなんだと気づいた。

(金曜日の平日午前中から休みを取ってフィッシュマンズの映画を観に来る人たちと一緒にこの場所に居られて、よかったなという気持ちになった。)



途中で、男達の別れ(1998.12.28)の『ひこうき』の映像が丸々流れた。

(これはきっと一曲流れるだろうと、どうか流して欲しいと思っていた。)

あの時佐藤伸治が弾いたギターは、人が泣いてるようだと思った。

私は音楽の技術みたいなものは一切わからないけれど、魂がこもっているとはこのことだと思った。

人間が泣いたり、語ったりしているようだと思う。何度見てもそう思う。


なぜこんなにこの人たちの音楽が好きなのかよくわからないけど、

それはきっと、長引いた就活で田舎の企業ばかり受けて、春から夏までずーっと鈍行の電車や高速バスに乗ってあちこちの車窓を見ながら、ずーっとずーっとフィッシュマンズばかり聴いていたから、あの時寄り添ってもらった恩義みたいなものかもしれない。

あの時救ってもらった者です、というような。


片道5時間の就活の道のりはとても独りで、その時の自分の気持ちにフィットする音楽を聴きたくて、どういうわけか『Go Go Round This World!』と『いかれたbaby』の二曲だけを何百回と聴いた名古屋駅発の高速バスや、

『すばらしくてNICE CHOICE』と『BABY BLUE』だけを流した7月のものすごく蒸し暑い奈良の電車のホームとか、あの時あの曲しか寄り添いようのなかった光景とか感情があって、替えがきかないというか。


今後の人生でこの人たちの音楽より自分にフィットするものって出会えないんだろうなぁと思う。(あるのなら出会いたいと本当にずっと思ってるし、好きそうな近いフィーリングの曲は積極的に聴いてるけど、それでも出会える気配のないまま10年以上経ってしまった。)


この人たちの音楽を大音量で聴くのが人生で1番幸福な時間だなと思っていて、それはこの10年ずっとそう。

でもそれは、数年に一回催されるライブやフェスでしか味わえなくて。

スクリーンで観られるのは聴けるのはとても幸福で。

そりゃライブ会場と違って、柏原譲のベースで心臓の鼓動のリズムがズレそうになるくらい腹から重低音がズンズン体を揺すってきたりはしないけど、でも間違いなく幸福な時間だった。


2021年に味わえる一番幸福な時間は、映画館に足を運んでフィッシュマンズの映画を見ることだと思った。


叶うならロングロングランヒットになって、一年中映画館でフィッシュマンズがかかっていればいいのに。

もっと願望を口にするなら、

この先、一生いつでも、映画館に飛び込んだらフィッシュマンズの音楽が大音量で流れていたらいいのに、

と本気で思った。




映画、今日だけで2回見てしまった。
映画館までの電車の回数券も買ってしまった。
この夏はこの映画を何度も見られたら、それでよい。





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